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「EU経済産業情勢調査団」に参加して
株式会社システムサービス 取締役副社長 常 見 公 孝
訪問期間:2006.09.25〜10.04/訪問先:ソフィア・ダブリン・パリ

EU経済産業情勢調査団は、ブルガリアのソフィア、アイルランドのダブリン、フランスのパリにおいて、それぞれの国の外務省、経済産業省等、合計10の機関と企業の他、日本の在外公館を訪問し、それぞれの国における経済と産業の情勢並びに各国とEUとの関わりや深化について調査を行った。

1 ブルガリア

我々が入国した翌日、ブルガリアが2007年1月からEUに加盟することが正式に決定し、国中が喜びに湧き上がっていた。そんな状況の中、我々は、経済省、財務省、外務省を訪問した。
EU諸国の中には、ブルガリアのEU加盟について、まだ準備不足との意見も有るようだが、EU加盟を機に経済発展を遂げた例もあり、訪問先である各省の方々からも、これを機に、ブルガリアの経済発展に関する自信と期待を感じた。
豊かな自然と親日的で素朴な人が多いこの国が、今後どの様に発展して行くのか、私は、興味深く見守って行きたいと思う。

2 アイルランド

アイルランドは、EU加盟国の中で、高い経済成長率を維持しており、1994年から1999年迄の間、平均8.5%の経済成長率を達成した。今日でも、比較的高い経済成長率を維持し、好景気を続けている。その要因は、アイルランドがユーロ圏内で唯一、英語が公用語であることに加え、積極的に、外国のグローバル企業を誘致する施策を講じたことにより、1000社以上の外国企業がアイルランドに進出してきたことにある。
グローバル企業誘致の施策は、次の3点である。(1)一律12.5%と、低い法人税率を導入したこと。(2)外国企業が欲する質の高い国内労働力を育成するため、教育への積極的投資を行ったこと。(3)政・官・民が一体となって協議・検討する政治的体制のもとで、経済政策の早期実施を可能にしたこと。
私が、最も興味を抱いたのは、アイルランド政府の「教育に対する継続的投資」の姿勢である。資源に乏しいアイルランドにとって、質の高い国内労働力を輩出して行くことが、自国の経済発展にとどまらず、自国の質と文化の向上をはかる上でも、極めて重要な役割を担っていると思うからである。我が国にとっても、検討に値する問題である。
アイルランドを旅していると、田園風景の美しさと人々の素朴さが印象的であった。かつて、多くの先進国が、経済発展の過程でこれらを犠牲にしてきたように、アイルランドが同じ轍を踏まないことを切に願いたい。

3 フランス

フランスは、EU創設6ヶ国の1つで、ドイツと共にEUの中核国である。EUでは、加盟各国でEU憲法の批准手続きが進められてきたが、2005年5月29日、フランスでは、EU憲法の批准が、国民投票で否決された。
そもそもEU憲法は、2004年にEU加盟国が25ヶ国に拡大したことを契機に、より一層のEU拡大を実現する目的で、それまでのニース条約などに代わる条約として成案されたが、全加盟国が承認しないと発効しないことになっている。従って、フランスにおいて、このEU憲法の批准が否決された以上、2007年にEU加盟が決定しているルーマニアとブルガリアは別として、トルコのEU加盟問題には重大な影響を及ぼすことになった。
フランスにおいてEU憲法が否決された最大の理由は、元々、深刻な移民問題を抱えているうえ、経済が長期的に停滞し、失業率が10%と高止まりしている状況下でEU憲法を批准すると、旧東欧諸国からだけでなく、トルコからの移民が増加するとの強い警戒感であると言われている。EU憲法批准の問題は、これ以上EUを拡大するか否かという観点に直接関わる問題であり、来年のフランス大統領選挙を含め、今後の動向に注目していきたいと思う。