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少子高齢化に伴い顕在化する問題 その3:相続で揉めないために…

コラム 2008/08/07

1 相続が発生すると揉める…?

(1)
相続で揉めないのは無理…?
お客様と話していると、「相続で揉めないようにするのは無理だよ…。」という話しをよく耳にします。
相続発生後、元々仲が良かった兄弟姉妹が不用意なことを言うなどして喧嘩になり、弁護士に相談することがあります。
揉めた後で弁護士に相談するくらいですから、感情論などが原因で話し合いが纏まらず、結局、家庭裁判所に調停を申し立てることになった。
確かに、この様な例はよく見られます。
しかし、この様な事態は避けられないのでしょうか?
(2)
うちだけは大丈夫…?
上述の例とは逆で、「うちは、仲が良いから大丈夫だよ…。」という話しもよく耳にします。
しかし、私の経験では、相続で揉めている人達の多くは、相続が発生するまでは仲が良かった(悪くなかった)と思います。
また、「家柄が良い」・「頭脳明晰である」・「社会的地位が高い」という傾向もあります。
では、その様な方達がどうして揉めてしまうのでしょうか?

2 揉める原因…

既に、父が他界しており、母と長男A、次男B、長女Cがいる例で説明します。
長年に亘り、Aが両親の面倒を見てくれたことに加え家業も継いでくれたので、母は、「全財産をA に譲る。」という趣旨の遺言書を残しました。
このような遺言書があったとしても、BとCには遺留分(いりゅうぶん)といって法定相続分の半分を得る権利がありますので、その割合は、A:2/3、B:1/6(1/3×1/2)、C:1/6(1/3×1/2)となります。
多くの場合、Bらは遺留分のことを言い出し難いため、Aが「遺留分を支払う。」と言ってくれるのを期待しますが、Aが言わないため、結局、Bらが「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」を内容証明郵便で送ることになります。
この際、Bらは杓子定規な定型文をそのまま書き写すため、Aに喧嘩を売っている様な印象を与えてしまいます。
Aは、「長年苦労して両親の面倒を見てきたのに、内容証明で杓子定規な手紙を送りつけてきて失礼だ。」と怒りますが、この段階になると、Bらは、「遺留分を貰うのは当然の権利だ。」という意識を持っており失礼だとは思っていません。
この気持ちの擦れ違いが揉めごとの火種となります。
その後、当事者達は話合いをすることになりますが、双方が兄弟という甘えもあって憶測でものを言ったり相手の気持ちを逆撫でする様なことを言いがちになります。
すると、互いに「あの言いぐさは絶対に許せない…。」という感情論に発展し本格的な揉めごとに発展して行くことになります。

3 相続で揉めない方法…

(1)
揉めない遺言書の書き方
2の例の場合、母が遺言書を作成する際、「BとCには、遺留分に相当する遺産を相続させることとし、どの遺産をBに、どの遺産をCに相続させる。」などと書けば良かったのです。
いくら全財産をAに相続させたいと思っても、法律で遺留分が定められている限り揉める可能性が高いのですから…。
自分の死後、子供達が裁判までやり、結局、法律で定められたとおりの配分を相続することになるのであれば、遺言書を作成する段階でこれを加味すれば良かったのです。
(2)
もし、遺言書に書かれていなかったら…
もし、遺言書に3-(1)の様な記載がない場合、可能な限り早い段階で、Aは、「遺留分を支払うから安心して欲しい。」と宣言すべきです。
そうすることで、Bらは安心し、後の話し合いがスムーズになります。
このとき大切なことは、「もしかしたら、Bらは遺留分のことを知らないかもしれない…。」と考えないことです。
(2)
遺留分を請求するときは…
遺留分を請求するときは、細心の注意が必要です。
先にも述べたように、杓子定規な定型文をそのまま使うとAに喧嘩を売っているような印象を与えますので、丁寧な言い回しに書き換えたうえでAの苦労をねぎらうなどの配慮をすべきです。
そもそも、母が遺言を残した理由は、Aが最も母(両親)へ貢献したからでしょうし、母が亡くなった今となっては、「遺言が母の意思である。」と解釈するしかないのですから…。
だったら、嫌味なことを言わず、遺留分を貰うことで納得しAとの関係を保った方が良いのではないでしょうか。