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少子高齢化に伴い顕在化する問題 その2:不動産を処分したいが、お爺ちゃんが認知症に…

コラム 2007/08/30

1 認知症の方が増加…

2006年の統計によると、日本人の平均寿命は、男性78.32歳、女性85.32歳です。
日本では、毎年、認知症の方が増加しており、85歳以上のお年寄り4人に1人が認知症と言われています。そして、2005年には189万人だった認知症の方が、20年後には約292万人にも達すると予測されています。
(1)
認知症の定義
誰でも「久し振りに会った人のことを思い出せない…」という経験があると思います。
このような「もの忘れ」は老化によって起る「単なる歳のせい」で誰にでもあることです。
ところが、認知症は、単なるもの忘れでなく病気であり「脳や身体の疾患が原因で、記憶力や判断力などに障害が起り、普通の社会生活が送れなくなった状態」と定義されています。
認知症の多くは、「アルツハイマー病」と「脳血管障害」によるもので、頭蓋内の病気や身体の病気など、脳の病的な障害によって起ります。
尚、日本では、脳血管障害による認知症の方が、アルツハイマー病よりも多いと言われていましたが、最近ではその割合が逆転し、アルツハイマー病の方が多いとの報告があります。
(2)
認知症の症状
認知症の症状は、中心となる症状と、それに伴って起る周辺の症状に分けられます。
中心となる症状とは「記憶障害」や「判断力の低下」などで、必ずみられる症状です。
周辺の症状は人によって差があり、怒りっぽくなったり、不安になったり、異常な行動がみられたりすることがあります。

2 お元気なうちに、充分な検討を…

高齢化に伴い、認知症になる方が増加する傾向にあるため、皆様の回りにも、認知症かその疑いのある方がいらっしゃると思います。
また、高齢者が所有している不動産を売却するなど様々な判断に迫られることがあります。
このような場合、不動産を所有している方に判断能力があるうちに方針を決定しないと、後々、何らかの処理をしようと思ってもできなくなることがあるのです。
無事、不動産を売買できたと思っても、将来、利害関係者から売主の判断能力の問題を指摘された結果、売却行為そのものが否定されることになり、大きなトラブルに発展することが少なくないのです。
そこで、不動産を処分する場合、充分に所有者の判断能力があるうちに方針を決定し実行しておくことが重要になるのです。

3 もし、判断能力に問題がある場合は…

既に、判断能力に疑問がある方が不動産を売却する場合、弁護士や司法書士に相談して適切なアドバイスを受けることが重要です。
この場合、一定の費用がかかりますが(弁護士や司法書士にご確認下さい)、家庭裁判所に対して「成年後見開始の申し立て」を行うことになります。
この申し立てを行なうと、「後見人」といって、本人の代わりに財産の処分権限を持つ人が専任されます。「後見人」には、弁護士・司法書士・家族の方などの中から、裁判所が適切と判断した人が選ばれます。
手続きに要する時間は、家庭裁判所によって異なりますが、一般的に、申し立てを行ってから「後見人」が専任されるまで三ヶ月~半年程度かかります。
こうして「後見人」が決まってから、不動産を売却することになります。
これらの手続きは、とても面倒なことに感じると思いますが、この手続きを行わずに不動産を売却したために後でトラブルに巻き込まれる可能性を考えると、むしろ近道で確実と言えるのです。